喉に強い違和感・異物感があって医者に行ったら『咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)』と診断された。
【症状】
喉の奥に「なにかあるな」という感覚が起きたのは一か月前。のどぼとけの上あたりの右側面が、ボコッと腫れてるというか、噴き出ているというか、違和感がしていた。なにぶん内部のことなので視認できない。
めちゃめちゃ痛いというわけでもないけど、何かの拍子にのどが動くと、なにかこう、痛いような気がする。「気がする」というより実際痛い。けど、切れたとか抉れたとか、そういうことはない。
喉の違和感なので息苦しい感じがする。が、息がほんとにできなくなることはない。
感じようによっては、喉の表面の内部に膿溜りのようなものができていて、そこが押しつぶされて重い痛みになっているような、そんな感じである。つまり、これが怖い。腫瘍とかそういうのを想起させるのだ。
喉を外から見る限り、なにもない。赤くもなければ腫れても膨らんでもない。ひどい時はリンパがごいごい詰まってる感じがした。
【類症】
ぼくは上記の症状を一か月くらい放置していた。
なんでそんなに長いことほっといたかというと、去年末に同じようなことがあったからだ。
その時は違和感一週間目くらいに病院に行き、鼻からカメラを入れて喉を見てもらったところ、扁桃腺がちょっと腫れてて白い膿がでていた。それを先生、棒でチョンと取り除いて、こんなことを言った。
『あんた不規則な生活してるでしょ。夜更かしして酒飲んで、そういうのをちゃんとしないと、いつまでも治らんよ』
まあいくらか図星だが、こういうことを言われると、なんだか安心するのである。ほんとにひどい病気というのは、運だの因果だの、いわくを自分の罪業に求めにくい。不規則だの暴飲暴食だの言われると、病気の出所が知れるので、そんなに不条理感をいだくことがない。だからちょっと自省して、また遊び惚けるのである。
この時は、生活をおとなしくしたところ、結構すぐ治ったので、「今度のもこれと似たようなもんだろ」と、少し生活を規則正しくしてみた。
ところが全然よくならない。
日によって違和感に大小あるが、少なくともよくなっているというよりは悪くなっていく、あるいは病識のエリアが拡大しているような(喉を超えて鎖骨のあたりまで響くような)感じすらした。
それで「こいつはただ事じゃない」と思い、病院に行った。なにしろ会ったことのない祖父が喉頭がんで死んでいるので、そろそろぼくもお役御免の蛍の光かと、暗い影がよぎったのである。
【診断】
口うるさい先生とは別の病院に行った。医師に症状と過去の事情を話したところ、「んじゃ見てみましょう」ということで、鼻からカメラと相成った。
ぼくの座る前に先生が座り、カメラを操る。先生の肩越しにパソコンのモニタがあり、映像が生中継される。
カメラはぐんぐん進んでいった。ピンク色ののどが映し出される。
先生曰く
『何にもないですね』
『きれいなものだ』
『健康ですね』
んなわけがない。いまだって喉がぐっごっごなんだから。
でもしゃべれないので「はあ」「ふう」「へえ」と答える。
結果、先生がつけた診断が「咽喉頭異常感症」。
くわしくはこちら。
【総評】
要はストレスだという。
ぼくとしては、心身とも過重がかかっている感じはないのだが、どうやら身も心もひいひい言っているらしい。身と心とぼくの三人が共同で「ぼく」を運営しているとしたら、ぼくだけかなり鈍感&空気読めてなくて、連合体の足を引っ張っているようである。
しかしこれだけ違和感があって痛みがあるのに、まったく何の所見もないというのは、不気味だ。すこぶるファントムな症状である。これに罹って「ぜってえやばい病気だ」と思わない人はいないだろう。そのくらいリアルな感じである。病気までバーチャルな時代を迎えた。
診断後、医療系のウェブサイトをぶらぶら回ってこの疾病の情報を訪ねたら、その中に非常に端的な一説があったのでそれをここに載せておく。
食事やつばを呑み込んだときにのどに抵抗感がなければ、まず心配はないでしょう。ノイローゼ気味の人は食事の際には異常感が消失するといいます。つばや飲食物を呑み込んだときに違和感を感じるというのは危険です。(咽喉頭異常感症・笠井耳鼻咽喉科クリニック様)
まったくこの通りだ。
食べ物や飲み物が通っても全然痛くない。異物感があるのに物が引っかかったり詰まったりしない。
当然だ。
何もないんだから。
そうさ、ぼくはノイローゼ気味('A`)
お医者の意見を聞いて、喉の違和感が半減した気がする。
大病じゃないことが分かって安心した ストレスが減じたということだろう。
ストレス社会もつらいけど、淡白な自分に情けなくなって、それが新たなストレスになりますね。
*
11月リリース予定の小説の推敲と並行して、長編も書いています。ちょっとダレてきています。ここいらでガっと進めないと、頓挫してしまう可能性大です。でもあんまり気を入れすぎると疲れて無理がたたって喉がダメんなるので、せいぜいおとなしくやっていきます。おしまい。