表題の興行が2026年5月31日(日)に鹿児島市の黎明館で催された。主催は落語を愉しむ会。『ゆるいと亭』様のお席である。

いつもメールで座席をお願いするのだが、毎回希望通りの席をお手配くださり、気が付けば初めて行った時から毎回同じ場所で、さながら指定席である。なるべく後ろの、通路側だ。本当にありがたい。
ぼくは高座を視る時、手前にお客さんの頭が入る方が好きだ。寄席の風情がでる。それに、あんまり噺家さんの目の前だと、携帯をチラ見したり、トイレで中座したりできなくなる(したらだめだが仕方がない時もあるでしょ)。通路側を希望するのも、トイレに行きたくなった時にスッと出られるからだ。トイレ近いので、気になるのですよ。
馬石さんと小痴楽さん、ライブは初見である。テレビかネットで拝見して、お二人とも「すごい噺家だ!」と気になっていた。
馬石さんは巧みな印象。小痴楽さんはパーソナリティーで押し出す印象。
馬石さんは、現在の名人一門・雲助門下である。師匠は国宝・雲助さん。兄弟子は鹿児島でお馴染み、ぼくが「志ん生に一番近い男」と勝手に思っている白酒さん。うまくないわけがない。
小痴楽さんは、メディア露出が多く、冴えた毒舌家のイメージもあるが、ぼくは常々その芸風に惹かれていた。最近の若手真打が登場人物のキャラクター性をデフォルメしすぎるきらいがあるのに対し、もう少し俯瞰で人間を見つめて造形しているように思え、好感を持っていたのである。
芸と人気を認められて、28年には6代目痴楽を襲名するとのこと。おめでたい。お古いファンは「痴楽」と聞くと、綴り方教室の痴楽(4代目)を思い出すだろう。5代目はその弟子で、その息子がこのたび6代目を継ぐ。正直なところ、5代目は4代目を人気の面で凌駕できなかったと思う。しかし6代目は間違いなく超えていくと信じている。
さて、レポートに入ろう。毎回お馴染み、席亭のたどたどしくてそれがかわいい前口上を経て、演芸がはじまった。
馬石さんはもともと劇団員で、石坂浩二氏の勧めで落語家に転身したという。以来、数々の演芸賞を受賞。そこには舞台経験の強みがあったのではないかと思う。身振り手振り、声の張り出し、元気でさっぱりして「陽」の空気が流れている。
かたや小痴楽さんは、のっけから席亭への毒舌が冴えわたり、面白おかしく語り、お客をつかんでいく。声はやや低い調子。美声とは言わないけれど、長く聞いていられる好い響きがある。また、声量が大きい。そのへんは馬石さんと対照的だったと思う。
隅田川馬石 柳亭小痴樂 二人会@黎明館 感想
— 小林アヲイ (@IrresponSister) 2026年5月31日
▼馬石 元犬
石坂浩二の助言で名咄家誕生
▼小痴樂 堪忍袋
席亭への毒舌が絶妙
<仲入>
▼小痴樂 あくび指南
自在の境地。今後の芸風如何?
▼馬石 火炎太鼓
熱演。
素晴らしい顔つけ。4席古典。途中で新作か色物で気分を変えたい感じも。#ゆるいと亭
仲入り前は、馬石さん「元犬」小痴楽さん「堪忍袋」、いわゆる落語ファンタジーが並んだ。ありえない物事を設定とするため、噺の上で説明を要するが、そこに笑いを絡めつつ様々なパターンを配置し、繰り返しの中で噺の要諦を浮かび上がらせていく。繰り返しはどうしても強調的になり、客席に押し込むような形になる。客は満場爆笑したが、仲入り前ですでに少し疲れたような空気が流れた。
仲入り後、小痴楽さん「あくび指南」馬石さん「火炎太鼓」。両方とも、登場人物のキャラ立ちがややデフォルメ化されて見えた。その方がウケるのだろう……。
この演芸席の一つのパターンでもあるけど、仲入り後はしっかりきっちり古典落語が配置される。仲入り前は、初見のごあいさつもあり、マクラもあり、一席目ということで軽い噺が選ばれることから、客席が軽い笑いに満ちる。かたや、どうも仲入り後は、重たくなり、落語を初めて聞く人はそれなりに笑うけど、多少なりともかじっている人には、「あれ? 普通に終わった?」みたいな感じになる。うん? ぼくだけかな? 贅沢を言うと、「やっぱライブは生モノだよね」という「ここにしかない感」をもらって帰りたいのである。
私見ついでに思ったことを述べると、たとえば2席あるなら、一席目はマクラを振らずに軽い噺をサラッとやって降り、二席目で「先程はごあいさつがわりに〇〇をお聞きいただきました~」から長めのまくらをやって、しっかり古典をやる……というのはのはどうだろうか(思い出せないが、過去にどなたかいらっしゃった気がする)。
つまり、「マクラ-古典①-古典②」だと、客は①で笑い過ぎて②で疲れてしまう。「古典①-マクラ-古典②」にし、マクラで笑いを軽めに抑えておくことで、客の笑い疲れを少し癒す。たぶん寄席なら番組の間に新作や色物を挿んで、空気を刷新するのだろう…以上お節介な独り言でした。
以上、1年ぶりのゆるいと亭さんの席を拝見した感想でした。次は11/29、白酒師匠の独演会。すでにチケットを購入させていただきました。文学フリマ東京以来取り立てて何の予定もないぼくの人生の、数少ないスケジュールです。たのしみにしています。
▼落語観賞録の末尾には、この書物の宣伝を貼ることになっています('A`)



