アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

「ぼくはまだまだ未熟者だ」と痛感した件。

 

日、昔お世話になっていた会社に新年の挨拶に伺った。

感染拡大防止の観点から宴じみた席は設けられず、大御所大先輩がひっそり街に繰り出すにあたり、ガードマン兼お相伴と、久方ぶりに随行した。

予期していた通り、先輩、へべれけになり、道をまっすぐ歩けなくなった(ぼくの方はしらふも同然だった)。

先輩の酔態はますますひどく、早急にお帰し申し上げないと甚だまずいことになると思ったぼくは、肩を貸して何とかタクシー乗り場まで連れて行こうとした。

だが、先輩はふらふらとよろめいてけつまづき、街路の植え込みにドサァッと倒れこむ。枝がボキボキ折れる音がする。

おおいてて、ささるささる

先輩の呻くのを、「はいはい」と応え、通りかかったタクシーに放り込んだのは、まことにめんどくさい仕儀であった。

 

と、あらかじめそんな話をしておいて……


夜、ぼくは、ほろ酔いの帰り、街灯の無い暗い路地を歩いていて、前のめりにコケた。

コケたといっても、ボテーッと身体を地面に叩きつけたわけではなく、とっさにアスファルトの地面に手をついて、前受け身らしきものをとった。

ゆえに顔は無傷で済んだ。

だが、翌日、だんだん右手のたなごころのところが痛くなってきた。

単純な打撲痛というより、手をどうにか動かしたら、親指の付け根の関節がシャレにならんくらい痛い。これは骨をどうかしたかなという、やばい感じである。

で、お病院に行って、レントゲンを撮ったら  まだ今のところ正式な診断は出ていないのだけど  先生曰く

ヒビか、骨the showくらいはあるかもね

ということである。

先生は万事警戒してぼくの手首に副え木をしてくださった。誠に情けない限りである。

 

てもらった翌々日、副え木をした状態で、友人に会うことがあって、コケてこの仕儀と伝えると、大いに笑い

実は昨年末キミと飲んだ時、別れてからの帰り道で三度コケた

という。

ぼくは( ゚Д゚)ハァ?という顔をして、

こっちは一回で手が逝ったのに、なんで三度もコケて無傷なのか

と尋ねると、彼答えて曰く

街路の植え込みに倒れこんだからね

それを聞いてぼくはハッとした。

一つの風景を思い出したのだ。

過日、大御所大先輩をタクシーに乗せる前、あの人が足をあやとりのように絡ませながら大きく傾き、街路の植え込みにゆっくりと倒れ掛かるのを。

先輩は、あれはわざとだったのだ

友人も、コケるときはそうするのだ

つまり、彼らは、酒の帰り道の転倒を何度も体験し、そのうち身体が自然と手近な植え込みに倒れ掛かるように、矯正されているのだ。

 

あゝ、ぼくはまだまだ未熟者だ。

まだその域まで達せぬのに、不用心にも夜道を酔歩して……。

恐れを知らぬということは、それこそ真に恐るべきことだ

これからは、酒の帰り道は、できるだけ街路に植え込みのある大きな通りを歩くことにしようと学んだことであった。

 

おしまい。

 

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