ニュースに疎いもんだから前兆なく唐突に始まった感があるが、ほんとはどっかで告知してたんだろうか。誰でも無料でペーパーバック本を出せるようになった。ぼくとしては、数年前から日本版PODのエージェントであるネクストパブリッシングさんからすでに10冊くらいだしていたので、いまさら紙の本がリリースできることに特別な感慨はなかった。むしろこれがはじまったことで「くだんのエージェントはこれからやっていけるんだろうか」とお節介な心配をしたくらいのものである。
さっそくKDP版PODを2冊スタートしてみた。やってみて、やっぱり、KDP版のPODと、ネクパブを通したPOD(以下N版PODと呼ぶ)ではいろいろと違いがあることに気付いた。いまさらそんなことをおさらいしてもしょうがないんだけど、以下、なんとなく、綴ってみる。
- サンプル冊子
KDP版PODは表紙・背表紙・裏表紙にぐるりと灰色の帯が描かれ、手元保存用にするには躊躇する。しかしN版PODはそれがなく、仕上がりはリリース後のPODよりきれいで、自宅保存用としても重宝した。
KDP版PODは電子書籍と表紙を合わせてみた。ぼやけるかなと思ったけど大丈夫っぽい。 pic.twitter.com/RUeHKVKBZi
— 小林アヲイ (@IrresponSister) 2021年10月28日 - 表紙入稿方法
KDP版PODはくるみ製本で表紙・背表紙・裏表紙を一枚データにせにゃならず、しかも断ち切り幅がインチ由来で、コンマミリで計算しなきゃならない。一方N版PODは表紙・背表紙・裏表紙を別々で書き出し、断ち切りはきっかり3ミリ。データのつくり方、準備の仕方はN版PODの方がやりやすかった。 - データ変更
KDP版PODはKDP電子書籍同様いつでも好きな時に変更が可能(審査あり)だが、N版PODは一部が有料(一律5000円)で、一度リリースしたら値段は変えられなかった。修正の有償無償は、非常に大きい。N版PODだと、出版後に誤字が発見されちゃったら5000円出して修正する羽目になるが、一体何冊売れたら元が取れるのかと面食らったものだ。 - 国会図書館登録
N版PODはオプションでそんなのがあった。だけど国会図書館にいれるメリットってなんなのかね。 - 仲介料
N版PODはエージェントなので仲介料を取る。本が売れたらAmazonへのロイヤリティ以外に彼らの取り分も売り上げから天引きされる。KDP版PODが解禁されたことにより、彼らがどのくらい受け取っていたのかおおよそ分かるようになったのだが、それについちゃあそれほど取ってなかったんだなと思った。 - 販売ページの表記
ぼくのとある出版物でのこと。KDP電子書籍とN版PODでリリースしていて、PC版のAmazon販売画面を見ると、書影の横に「電子書籍」「ペーパーバック」の二つの表記が並んでいた。そこにさらにKDP版PODをリリースするとどうなるか 「電子書籍」「ペーパーバック(1)」「ペーパーバック(2)」みたいに三つ並びになるのかしら?と思いきや、意外や意外、「電子書籍」「ペーパーバック」のまま。しかもよく見ると、このペーパーバックはKDP版POD。じゃあN版PODはどこに行ったのか……ページを注視すると、すぐ上に「すべての形式と版を表示」という文字がある。それをクリックしたらサイドドロアで電子書籍と二つのペーパーバックが表示されていた。ははあ、おまえ、そこにいたのか。 - これはバグなのか?
上と同じ出版物、電子書籍とN版PODを出して、両者はkindleリンクされていた。電子書籍の評価は☆5が1つなのだが、なぜかN版に反映されず無星だった。表紙デザインとタイトルが微妙に違ったことから、「リンクされてるけど別物」と認識されてそうなったのかなと思っていた。
で、このたび、この作品のKDP版PODを出した。仕様はN版と全く同じ。きっと電子書籍の☆はリンクされないんだろうと思っていたら、なぜかKDP版もN版も両方とも☆5になった。あれあれ? 理由は不明だ。でもまあ、悪いこっちゃないからよしとする。
以上。
すごい時代だね。誰でも紙の本をだせる。
しかし、ただでさえ粗製乱造の感のある小説界隈において、KDP版PODは南西諸島に流れ着く軽石のごとく、美しい読書の海を覆い尽くしてしまわんともかぎらない。ぼくはいくつか出してるくせに、こういうのはあんまりよくない傾向のような気がするのです。