表題の興行が2024年12月1日(日)に鹿児島市の黎明館で催された。主催は落語を愉しむ会。『ゆるいと亭』様のお席である。
15周年特別企画として、ゆるいと亭様がずーっと応援してこられた白酒師匠の師を迎えた。2023年に重要無形文化財保持者に認定された五街道雲助師匠である。チケットは発売開始3日で完売したとのこと。みんな国宝拝観したくて押し寄せたのである。そう、これは一種の出開帳なのだ。
五街道雲助・桃月庵白酒 親子会@黎明館
— 小林アヲイ (@IrresponSister) 2024年12月1日
古今亭のねたをあっさり・くどくなく。
白酒「壺算」
雲助「幾代餅」
▼親方が弟子へむける親しみ・優しさ。親子会師弟の絆とも重なるものが。
ー仲入りー
雲助「強情灸」
白酒「抜け雀」
▼サゲの科白を師匠の名前とかけるのかと思いきや…。 #ゆるいと亭
白酒師匠は、本席で何度も観覧している。そう遠からず志ん生を名乗るべき噺家さんである。
雲助師匠は私にとって10年ぶり。鈴本で膝前に『町内の若い衆』をお演りになって、客席に笑いの絶妙な小糠雨を降らせていた。軽めで「ね? わかるでしょ?」という風合いの噺をなさったら、右に出る者はいない。今回も『幾代餅』の冒頭で疝気だのペニシリンだの、ややバレ感のある筋をスルスルッとお語りになって、それでいて全くいやらしくならないところなんかは、実に見事でした。
余談ですが、仮に噺家さんに「国宝になるのと六代目志ん生を襲名するの、どっちが重い?」と尋ねたら、みんな後者と言いそうだなぁ。
ざっと振り返ると……
『壷算』恥を承知で告白するが、この噺は聞いてるうちにいつだってこっちまで分からなくなって、店主と一緒に騙されそうになる。最後はいつも苦笑いだ。
『幾代餅』は絶妙な匙加減。みんなハッピーになれる良き噺。
『強情灸』今席で一番好きでした。表情と仕草の面白さ。ぼくのおつむはああいった分かりやすい噺に惹かれるのです。
トリは白酒師匠の『抜け雀』。下げは通常「父親を【かごかき】にしてしまった」ってやつで、つまり師匠のお名前【雲助】とかけてらっしゃるのかな……だとしたらどんなふうにもっていくのかな……と思っていたところ、「かごだけに担がれちゃった?」とシンプルに落とされた。はじめて聴いたパターンだったので、こんな下げ方もあるのだなぁと感心しつつ、何となく肩透かしを食った感がある。
とはいえ、本式にやって師匠の名前にかけたところで「だからなんなの」ってなるのは否めない。
もっとも、この勘繰りの出どころは当日配布された資料で、過去の親子会で『子ほめ』『子は鎹』のやりとりがあったというのを目にしたから、演目を介してなんかあるのかなーと思った…までである。
古今亭らしい演目が並び、全体にあっさりとした感じだったなーと思った。考えてみればいつも3席のところ今回は4席で、大きなネタはいくらか短めであった。だがそれがいい。ちょうどいい。
白酒師匠には盤石の感、雲助師匠は隙のない名人芸、素晴らしい芸を見せていただいた。ぜひまたこの喜びを体験したい。