アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

消えたプロローグと恐怖の「魚群的観衆」

 

ツイッターで呟いたのを転載&ちょっと追記。 

し振りにkoboのPCアプリを開き、忘却のかなたにあった「無責任姉妹」を見つけ、開けて見た。何年か前にkoboをやる時、試しにDLしたものだ。現行にはないプロローグがあり(自分でも存在を忘れていた)、そこを読みなおして意外に「なかなか良い」と思った。でもこの部分は、のちにKDPでKENPが伸びなくなる原因箇所になっていたから、現在は外している。茶室のシーンである。

個人的にはいつも「小説なんて好きなことを好きなように書けばいい」と思うし言ってるけど、折角手に取ってくれた人には最後まで読んでほしいと思うので、泣く泣く切った記憶がある。みなざっと見てすぐに止めちゃう。「こいつにちょっとつきあってやるか」という数奇者読者はこんにちよっぽどである。

自分の小説など些細なことだが、こんな現況を引き延ばして考えた時、気が滅入ることがある。
自分が「これいいよね」と本気で思っているのが世間で全く通用せず、且つまた、世間でもてはやされているものをぼくが全く理解できない…前者はともかく、後者はしんどい。この状態のまま現世を寿命まで生きるかと思うと、気が遠くなる。

世間の嗜好に合わせるのは困難だ。こないだサッカー観戦に誘われたのだけど断った。「都合が~」と言ったのだけど、ほんとのことを言うと、あの、競技場でみんなが一つの物を延々と熱狂的に応援している光景をみるのが、ほんとに気持ち悪くて、耐え難い。最近のラグビー熱もそうですよ。あれはどういうメカニズムなんだろう。貴様ら魚群か?と思う。たいがいのスポーツ・芸能はこんなふうだ。文芸も。

小説にしろなんにしろ、自分の言行を大勢の関心に合わせるのは、できないどころかむしろ恐怖で、やるにしても、こないだ動画で言ったようにそこに悪気がまじってしまう。いや、悪気どころか悪意だよ。別にへそまがりアンチであるつもりはない。もう、生理的に、受け付けないのである。

そんな中で、件の「無責任姉妹」について思うのは「せっかく自分のを手に取ってくれる人がいるのなら、最後まで読んでほしい」というのと「自分の書いたプロローグがそれを阻害するなら切り捨てるほかない」というのが、こう、ぐちゃぐちゃーっとなっている。正直複雑である。世間にあわない、あわせられない…そんな中で自分の表現物が手に取られた時、せめてその人とくらいは、なにかシンクロする部分を持ちたいと思うから……。

まあ誰しもそんなことは抱えているかもね。

とまあ、以上、まとまりはないけど、「おしまい」。

 

◆没プロローグ「無責任姉妹①」◆

 雨上がりの中庭は風の巡りが悪く、湿っぽい空気が蒸れるように淀んでいる。時折、花壇から季節の花の香りが届く。湿気と香りの重さが、どこか息苦しい。
 中庭の最深奥。影に佇む苔むした白壁の茶室。
 夕方の日差しは春めいて柔らかく、全てを桜色に包み込むようだった。だが、さすがに茶室の内部まで光を届かせてはいなかった。
 躙(にじ)り口から見える二人の姿。陰影に仄白い輪郭を描いている。
 左手に正座するのは、主(あるじ)。白紬の袖口から白磁の様に透き通った手が伸び、茶を点(た)てている。
 対面に客人(まろうど)。だぶだぶとしたズボンの腿の上に、小さく握られた拳が見える。
 二人の顔は、躙り口の狭さに阻まれ、外から見ることができない。
 やがて、緋毛氈の上に主の白い手が伸び、一鉢の抹茶を推し出した。
「時に、先生」
 主の声は、幼いくらいに瑞々(みずみず)しい張りを湛えた女の声だった。
「漆田のことなのですが」
「ああ。うん」
 こちらの声は、やや低め。大人の女性  といってもまだ若い。年の頃は二十七、八か。手を伸ばし、鉢を受け取る。
「もちろん先生のご意思も同じでございましょう?」
 無言。
 緋毛氈の上に鉢が戻る。
「いかがです?」
「結構な御点前(おてまえ)であった」
「ご冗談を。そうではございません」
「うん?」
「先生こそ、今日は彼女の件でこちらにお越しなのでしょう」
「ふん……。何もかもお見通しだな。一之瀬は」
「私と先生との間柄ではありませんか。判らぬことなどありましょうか」
「痴れたことを。しかし、お前の望みは何なのだ? 復讐か? 制裁か?」
「まさか」
 暗中に光が射し、主の女の口元を白く照らし出す。
 浮かび上がる唇の線。口角が歪むように、ひくりと上がる。
「先生もご存知でしょうに。ただ気に入らぬ、それだけです」
「そうか」
 乾いた声。茶室の空気が毛羽立つ。
「なぜお前たちは、そう虚しくあろうとするのだろうな」
「それは、そういうシナリオを書かれる御仁がおられるからでは?」
 茶室の外で、腐りかけた獅子脅(ししおどし)が、コン、と固い音を立てる。 

 

◆つづきは下の本をぽちんなさい。

学園コメディ無責任姉妹 1: 漆田琴香、煩悶ス。

学園コメディ無責任姉妹 1: 漆田琴香、煩悶ス。

 

 

 

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