今号は「温泉記。」のならいを破り、鹿児島県ではない湯を紹介する。宮崎県小林市、森を森に包んでさらに森でコーティングしたような鬱蒼とした森の中に、その温泉はある。森の中を車で走ると、一際開かれた、おびただしい幟旗の場所に出る。そこが神の郷温泉だ。「神の郷」と書いて「かんのごう」と読む。
普段「銭湯志向」を謳って止まない私だが(誰も知らんこっちゃけど)、今回はなんと、一泊の宿でここを訪れた。つまり世間で言うところの「しっぽり温泉旅行」である。どうだ。スゴイだろ とは言い条、いつもの酒飲み仲間が徒党を組んで、閑静な田舎の湯殿を賑やかした、というところである。ロマンスもへったくれもないよ。
どうだね、このレトロ感。
ここは宿泊者用の離れの一角なのだが、炭鉱の洞穴のように枠木が並べられ、目と鼻の先ですら遠くに見える。こういう工夫がにくいね。ほんとに。
湯の吹き出す量は日本一なのだという。
薄めず、沸かし直さず、還流させず。とろっとしている。炭酸泉でたまにボコッとあぶくが。屁ではないと主張する必要はない。人はほとんどいなかった。
これは離れ区画内の「ヒノキ風呂」。ぬるめでいつまでも浸かっていられる。ぬるいのに冷めづらいのは炭酸泉の良点。このほか、離れにはそれぞれ露天風呂がついている。写真を撮ればよかったなぁ。贅沢テキメンである。メインの建屋には大浴場もあるとのことだが、私は行っていない。
料理も良い。ディナーに宮崎牛や宮崎地鶏を楽しめる。朝のバイキングもボリューム満点。田舎旅館ならではの圧倒的なボリュームで食った後しばらくは動けない……が、湯に入るとお腹が動いてまた食べたくなる。不思議だ。
銭湯通いと違ってしょっちゅうは堪能できないが、たまにはこういうところにいってノンビリするのも良い。日頃から暇すぎてノンビリしている私には、明日の不安を忘れる効果が あっていいのかしら。
ま、いずれにしろ、湯はいい。