アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

新型コロナと事業継続支援金と紙屑屋

 

然儲からない商売をしている上に、新型コロナ弊害を蒙りまくったので、にっちもさっちもいかず、公的資金を投入することになった。事業継続に関する各種支援の申請である。国や地方自治体がやっている。国民一律10万円の特別給付金とは別のやつ。あるでしょ、ほら、フリーランスはいくら、法人はいくら、みたいな。

手続きは難航、不安まみれであった。というのも、これらの申請には前年度確定申告の書類が要る。私の確定申告はオンラインソフト頼り&ネット独習で、然るべき資格者にチェックしてもらったことはただの一度もない。つまり会計ド素人で簿記のボの字も知らないのである。だから毎年、確定申告書を仕上げたのちに不安を覚えないことはない。税務署は黙って受け取ってくれるけど、実は雀の涙のような私の申告など「はいはい」てな感じで鼻先スルーしてるんだろう……とか勝手な想像をしていた。それがもし、今回の申請によって、私の素人会計が露呈し、各種窓口から「なんじゃこの書類は」「あほかこの売上台帳の書き方は」とお怒りを買うことになったら……。給付金どころかこれまでの不様な帳簿一式を全部掘り起こされ、挙句個人事業をクビになるのじゃなかろうかと、戦々恐々となったのである。

でもまあ、状況が状況なので、私は歯を食いしばって前年申告控を用意し、ほとんど空欄の悲しき売上台帳をこしらえ、おずおずと申請をいたした。

で……それでなんとか成った。

私は膝から崩れたよ。漏らしはしなかったが。

「あゝ、私の帳簿の付け方は正しかったわけね」

資金云々とは別の安堵を覚えたのである。

ああ、助かった。生き永らえた。命の御灯明はまだかすかに灯影を揺らしている。南無阿弥陀仏。危ない商売は早めに足を洗う必要があるねえ……。

 

れにしても、ニュースを見ていると、都会の飲食店がもうアップアップして、やれ廃業だ、倒産だと、悲惨な話が後を絶たない。4月7日に緊急事態宣言が出てわずか1か月で店をたたむなど、なんと簡単に潰れてしまうものかと唖然とする。自転車操業自転車操業だ。こういう人たちは、蓄財というか、内部留保というか、そういうのは一切なしでやってるんだろうか? そういうの無しで商売をしようとするなんて、豪胆だなあと思う。まあいろいろ事情はあるんだろうけど。

そんな話を聞くにつけ、私は8代目三笑亭可楽師匠の古典落語『らくだ』を思い出す。『らくだ』知らない人は動画サイトで聞いてください。

噺の冒頭で、紙屑屋はしつこく用を頼んでくるヤタケタのクマにこう言って逃れようとする。

「旦那、勘弁してくださいよ。今日はまだ一文も商いをしちゃいません。ウチにはお袋一人、嬶一人、ガキが一人、腹を空かせて待っている。釜の蓋が開きません」

ところが  
その後、酔って豹変した紙屑屋は、クマに「おめえ、もう商いに行った方がいいんじゃねえか?」と言われて激高する。

「おう兄弟。『商いは病み患い、雨降り風間』と言うぜ。一日二日商売を休んだからって釜の蓋が開かなくなるようなケチな紙屑屋とは、紙屑屋の出来がちがうんだい」

『らくだ』の紙屑屋ですら蓄えはあるようである。

まあでも、今度のことで、商いをする人はいろいろ考えるだろうね。事業というのは刺激的で創造的なものだ。実現にあたり、そりゃ夢を見なきゃいけないし、叶えようとするのはいいことである。だが、やはり大地にしっかり足腰をすえてなくては。支援金だって税金なのである。事業をするのは自由だけど、社会に軒付いてやるからには、身の処し方ひとつにも責任てものがあるような気もします。「普段税金を納めてりゃ文句は無いだろ」というだけじゃ、なさそうです。

人のことは言えないね>_<がんばります。

 

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