居酒屋の時短営業によって、新たに分かったことがある。
このところ、年のせいか、表で飲酒して家に帰って寝ると、翌朝になって昨晩のことがとんと思い出せないことが多い。まことになさけなくて、自分のことも酒のことも嫌いになりそうだが、離縁するのは無理で、ずるずるべったりの関係が続いていた。
で、最近、世間の赤提灯は時短営業になった。仕方ないと諦めて早々に家に帰っていたのを、「あ、早くから飲みだして早く帰ればいいじゃん」と思い立ち、独身の個人事業をいいことに、四時か五時に縄のれんをくぐって、八時の看板の頃に下楼するようになった。八時なんていうのは、随分早い時間だから、帰ってすぐに眠ることはなく、キリキリ痛みだす頭を抱えてしばらく過ごし、十二時頃、入眠する。
翌朝、目が覚める。
すると……昨日のことを意外に覚えている。
「そうか、飲んですぐ寝るから忘れちゃうのか……しばらく起きてたらいいのかな? たぶん」
家で酒の続きをやりがちなるところだけど、そこさえ耐えれば、健忘症をいちいち憂うことは無くなるかもしれない。
尤も、アルコールは確実に脳をむしばむけどね。
ていうか、その前に「飲みに行くな」という批判をもらいそうである。