アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

実録|5.27羽田空港・大欠航祭を振り返る

のう羽田空港のゴタゴタに巻き込まれ、私が乗ろうとしていた便は欠航、翌日の最終便に振替→延泊→勢いで浜松町午前二時→二日酔いで朦朧と空港ロビー(←いまココ)という顛末に相成った。記念に雑感を記しておこう。なにしろいつも日本の端っこにいるから、全国ニュースの舞台に立つことなんて、なかなか無いのである。たしかに迷惑は蒙ったけど、わりかしワクワクしたのも事実だ。ま、ミーハーなのである。

※ 5月27日の12時38分頃、羽田空港C滑走路にて出発前の大韓航空機のエンジンが炎上。幸い死傷者は出なかったが、その後かなりの便数が欠航した。

 

の日、仕事がトントンすすんで、飛行機の出発予定の三時間前(午前11時)には羽田にいた私は「搭乗口で昼寝でもするべ」と、さっさとゲートを潜った。おりしもサミットの影響で警備が固く、ものものしい。やれ鞄をあけろだ、コードをみせろだ。いつもやらないことをやるというのは、つまり普段はその分やれていないということか。

ゲートを潜った。あんまり時間があるので、動く歩道では歩かず立っていた。だるかったので手すりに頬杖をついて、流れる風景を眺めていた  すると、どうしたことだろう。徐々に上半身と下半身がずれていくではないか。動く歩道では、下のコンベアの方が手すりよりわずかに速いようだ。知らなかった。「帰ったら誰かに教えてやろう」と、心をときめかせた。

 

乗口でぼんやりしていると、事故が発生し欠航が決まった。アナウンスで「航空会社のカウンターで欠航手続きをしてください」。おお、カウンターって……もうゲート潜っちゃったよ。でももしかしたら、すでに搭乗口にいる人向けに航空会社から説明があるかもと思って、その場で30分位待ってたが、何も無かった。来るべきだろ。この30分が大いなるロスとなる。

航空会社の人を呼び留めて「かくかくしがじか、航空会社のカウンターに行くにはどのルート?」と訊いたら、普通に手荷物受取からアライバルに出ていいという。あそこには大体張り紙がしてあって「ここを通ったら戻れません」と書いてある。だから何と言うか、そう簡単には通ってはいけないような気がしていたのだ。そこを通れと言うのである。逝きて還れぬ黄泉の旅路のやうだ。

 

ライバルを通過して、上階のデパーチャーへ上がる。それはそれは、ものスゴイ混雑だった。

f:id:awoii:20160528161035j:plain

人人人人人人人人人人人人。ガアガアワウワウ

アナウンスが「手続は〇番カウンターに並んでください」とか言うので、まあよく分からんけど、並ぶしかないわなと。ところが列の最後尾が行けども行けどもあらわれない。長いこと長いこと……。南ウイングから真ん中のお土産物屋さんまで、ずずいと蛇行して続いているではないか!

教訓:搭乗口あたりにいて欠航が決まったら、臆せずアライバルを出てカウンターへ。 

「この列はディズニーランドも如何」

一目見てそう思った。私はトイレを済まし、飲料を買い、列に並んだ  そうしなければ、途中で列を離れたらまた並びなおしになるからだ。
その時点で6便が欠航していた。航空機はだいたい170人くらい乗れるから、ざっと1000人は並んでいたわけだ。3時間も早く来たのによ。

並んでいる間にも欠航がふえていく。混雑もましていく。みんな不安そう。私はちょっと地震の被災地のことを思った。たぶん、水や食料のことでこんな風にずーっと並んだりするんだろう。立っているのはきついけど、頑張ろうと思った。
時折アナウンスが流れて、〇便は搭乗手続きを再開したとか、〇〇行は別のカウンターで受け付けます(待ち時間が少ない)とか案内があった。すると長蛇に並んでいる中から嬉々として列を離れていく人がちらほらある。羨ましいと同時に、クソとも思う。被災地でも、先に帰宅が叶ったり、物資の融通が偏ったりすると、そんな風に妬みが起こるんだろうなと。

 

んでいる人たちは、みんな知らない者同士だけど、事故のせいで連帯感が沸くようになる。情報を共有したりしはじめる。私がぼんやり見ていると、列の前後で「あれはどうだ」「なにがああだ」と言ううちに仲良くなっている若い男女がいた。何が縁になるかわからんよなあ。こいつら那覇と新千歳とか、離れていればいいのにとか思った。私の周りはおじいちゃんおばあちゃんばかりだった。うかつに話しかけると、長い列&長い話の二重苦だ。

二時間半くらい並んだ。人々は停滞していた。ぐったりして鞄にもたれかかるお姉ちゃんがいる。口論を始める老夫婦がいる。電話をかけまくる外人がいる。仲良くなる男女がいる  だが、延々並んだ列も、もう終わる。あと3、4人で自分の番と言う時、私は後ろを振り返った。列は相変わらず、ずーっと向こうまで続いている。いまもまだ最後尾に人がいて、これから数時間やりきれない思いで並ぶのだ。おれ、がんばったなぁ。

手続自体は3分位で終わった。今日の振り替え機は無い。明日の最終便ならあるとのことで、その手続きを。「もし宿に泊まったら金は出るの?」と尋ねると「でません」とのこと。天災じゃないから出るかと思いきや……まあ、彼らも被害者だ。ていうか、あとで取りまとめて大韓航空に請求すればいいのに。

 

自身は翌日休みだったのでのんびり東京休暇をするだけだが、予定があったひとは大変だったろう。広島に行けない国会議員がいたとか、舞台に出れないアイドルがいたとか。
後でニュースをみたら、7万人の足に影響とのこと。たいがいどんな時もひとりぼっちな私は、その7万人という数値の中に自分も含まれているのだと思うと、ちょっと連帯な気がした。

いま羽田のデパーチャーのカフェでこれを書いている。フロアを見ても、昨日の欠片はひとつもない。だが、昨日だって事故の前はこんな風だった。次の瞬間は分からない。ああ、分からない。

  • アヲイの小説作品はアマゾンキンドルダイレクトパブリッシング(Amazon kindle Direct Publishing/KDP)にて電子書籍でお楽しみいただけます。
  • kindleの電子書籍はアプリをインストールすることでPC・スマートフォン・タブレットでもご覧いただけます。アプリは無料です。【ダウンロード(Amazon)

PR|自伝・小説・記事・手紙等の作成代行は文章専門・原稿制作
PR|文章代筆・さくら文研
PR|サクブン110番
PR|長編原稿+