最近分かったことがある。それは
私って、酒が好きというより酒場街が好きなんだ
ってことだ。
しばしば料理の世界で「器で食べる」みたいなことをいうが、言うなれば付加価値、それとおんなじで、家で独りで飲んでるよりは酒場街がいい。だからといってチェーン店みたく人がワイワイ賑やかなのがいいかというと、そうではない(むしろイヤだ)。かたや綺麗なホテルのレストランみたいなところがいいかというと、そうでもない(これも苦手だ)。
私が好きな酒場 それは、狭い路地にビッシリというやつ。
もう、なんかね、ムンムン。
何年通っても行きつくせないくらい店があって、どこもかしこもクセだらけで、店の中から聞こえる声と料理の匂いが路地中に漂っているような、そんな場所が好きなのである。まるで古典落語「二階ぞめき」の若旦那の趣味である。雰囲気が好きってやつ。あ、誰も分からんか。
北千住駅の一帯はまさにそんな場所だ(上の写真)。
前々から行ってみたいと思っていたが、九州発祥の田舎者ゆえ土地不案内。
そこで、かつて当地に仕事で縁があったという作家・あだちしんご氏に案内してもらって、夜の千住を訪れた。
あだちしんご氏は私の同業者である。付き合いは長く、もう10年を超える。だが、会ったのは今回が三度目だ。
電子書籍も出しておられる。
- 作者: あだちしんご
- 発売日: 2015/12/17
- メディア: Kindle版
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互いに物語に特化した文章書きだけに、文芸論みたいなものを語ったりして、差しつ差されつしたが、やっぱり何が楽しいって、文章書きの酒呑道中は普通の道行きと違い、それ自体が物語。酒場々々は章立てのようなものだ。都合5件ほど逍遥した。
一件目は立ち飲み小料理屋だった。知る人ぞ知る店らしく、平日16時の段階で行列ができていた。
こんな時間から一体どんな人が酒を飲むというのかね
なんて言ってたら、よく考えたら自分らも同じだと嗤う。
以降はワインを中心に。どこも安くてうまかった。
千住にかつて青果市場があったことをその名の由来とするお店では「いぶりがっこ」をはじめて食べた。真っ白い窯で焼くピザ屋さんでは、モッチリカリカリを両方たのしめた。シメに入ったバーで食べた「インディアンの戦闘食」は、インディアンが平和を愛することがよく分かった。そのせいかお店の人が親切だった。
これだけの情報で「あそこの店だ!」って分かる人がいたら、すごいねえ。
酒が入ると私はどうもだらしなくなって、どうでもいいことをああだこうだと喋り倒し、毎回あとから自己嫌悪である。一方あだちしんご氏は、寡黙というのではないが、よおく聴いてくれて、私が思いつかないことをポッと言ったりする。
二人とも同じ文筆業だが、根本的な文芸観は結構違っている。でもそれだから、手応え歯ごたえのある話が尽きない。だって現に、この日は昼の二時半からテッペン(0:00)まで呑んで、まったくモタレなかった。
酒場と文章書きサンは、私にとって滋養です。
世知辛い世の中、「あ、今たのしいな」って思えるものが一つでもあったら、もうそれだけで勝者でしょ?
最後に、あだちしんご氏が新刊を出されているのでご紹介。
- 作者: あだちしんご
- 発売日: 2016/04/22
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