アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

台所問題|シンクの排水溝のつまりがパイプ洗浄剤で解決しない件

 

地の近くの単身者用アパートに、かれこれ10年住んでいる。いまだに人魂も墓荒らしも視たことは無い。そばに清いドブ川が流れていて閑静で、墓をどうこう言わなければとてもいい場所である。いやしかし、墓を嫌う人は存外多い。どういうつもりなんだろう。みんなちゃんと火が通してあるのに。

ぼくはひとりやもめで個人商売なので家にいることが多く、つまり自炊をする。狭い台所で野暮な男料理をやるのだが、最近シンクの排水が悪くって、ちょろちょろ流すだけで水がたまってしまい、洗いものをする時に困っていた。今までもそういうことがたびたびあって、その時はパイプ洗浄剤を買ってきて流し込み、なんとかしのいできたのだが、今回はそれをやってもさっぱりだめ。どうしたことかと困ってみたが、ぼくのような管工事どしろうとが悩んでも馬鹿の考え休むに云々なので、管理会社に連絡した。

すると

近々に工事の人間を差し向けますが、作業によっちゃあそちらの出銭になるかもしれないので、そのへんはよろしく。

まあ10年も住んでたらこの貸間で起こるあらゆることは半ば自分に起因するだろうと、銭の多寡はおいといて、とにかく来てもらうことにした。

 

業服姿で頭に黒いタオルを巻いたお兄さん。きりっとした顔がちょっとこわめで、表で睨まれたら逃げ出したくなるが、今日ばかりは「シンクの神様」、どうかお願いしますと出迎えた。

お兄さん、まず蛇口をひねる

ああ、つまりますね。ワイヤ通してみましょう。

お兄さん、肩にたくしたる銀のワイヤを排水溝にゴイゴイつっこみはじめた。胃カメラような具合である。差し入れていくと、たまに何かにひっかかるようで、お兄さんはワイヤを上下してワイヤの先端の金具でパイプの側面をこさぐような挙動に出る。

油とか洗剤とかがパイプの内側に凝着するんですよ。

「凝着」とは云わなかったが、そんなようなことを仰った。ゴイゴイ削ってワイヤを引っ張り出し、先端についた付着物を見る。真っ白いゴムのようなものがついていて、それが凝着物だという。お兄さんは再びワイヤを差し入れてゴリゴリやり始めた。

ぼくは思った。

(ああ、この作業はこうやって終始するのね。床を抜いてパイプの一部を差し替えるとか、特殊な薬剤で強引に溶かすとか、そういうんじゃないのね)

 

イゴイほじるお兄さん。隣で突っ立って見ているぼく。まるで閑人がワカサギ釣りを眺めているようなえづらだ。

お兄さんは時折蛇口をひねり、水をガンガン流した。だが、お兄さんの労苦のわりに水は流れず、多少は良くなったように思うものの、相変わらず溜まっていく。

あの、お湯流していいですか。

ええどうぞ。

お兄さんは赤い蛇口をひねってお湯を流し始めた。同時にワイヤゴイゴイを再起動する。するとどうだろう、排水溝は「ゴェペ、ゴヘェ」と言いながら気泡を吐き出すではないか。
なるほど、凝着しているのは油分がメインだから、それらがお湯でフェヤァンとなって、剥がれたのである  いや、パイプの中の事だから想像する事しかできない。多分剥がれているのだ。

たまにこうしてお湯を流すといいですよ。

これは意表を突かれた。ぼくは昔、何かの読み物で

「排水溝というのはゴムだのパイプだの熱に溶けるものが使われているから、あんまり熱湯を流し込むのはいかん」

というのを読んだ記憶があった。以来、カップ焼きそばの湯切などは、ご丁寧に蛇口の水を流しながらシンクの端の方にこぼしていたくらいである。

そりゃ熱湯はまずいですけど、まあ、60度くらいのお湯なら、パイプにこびりつく油分を洗い流すことができるんです。

お兄さんはそう言ってワイヤを回収し、帰り支度をはじめた。シンクは普段より気持ち明るく光って見える。そう、排水溝のつまりは解消されたのだ!

あのもし、お代は?

管理会社さんから連絡が来ると思います。ま、今回の件はお客さんが不注意で壊したりしたんじゃないから、たぶん大家案件ですよ。

 

いか、みなさん。
シンクの排水溝がつまって、パイプ洗浄剤を飲ませてもダメなときは、専門家を呼ぶんですよ。市販の洗浄剤はU字部分にたまったゴミをどうこうするだけで、真っ直ぐの部分にこびりついた汚れを落とすことはできないんだそうです。

あと、詰まるのが嫌なら、たまに熱めの湯を流し入れなさいよ。

以上、つまったのがとれてつまらない話でした。

 

* * *

追記:ウチのシンクは夏場だけ詰まって冬は詰まることはなかった。「あれれ?パイプの詰まりに季節なんて関係あるのかしら」と疑問だったけど、それも解決しましたよ。冬は洗いものにお湯を使っていました^^

 

▼こっちは詰まってると思うよ。

ブレイブガールスープレックス

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新型コロナと事業継続支援金と紙屑屋

 

然儲からない商売をしている上に、新型コロナ弊害を蒙りまくったので、にっちもさっちもいかず、公的資金を投入することになった。事業継続に関する各種支援の申請である。国や地方自治体がやっている。国民一律10万円の特別給付金とは別のやつ。あるでしょ、ほら、フリーランスはいくら、法人はいくら、みたいな。

手続きは難航、不安まみれであった。というのも、これらの申請には前年度確定申告の書類が要る。私の確定申告はオンラインソフト頼り&ネット独習で、然るべき資格者にチェックしてもらったことはただの一度もない。つまり会計ド素人で簿記のボの字も知らないのである。だから毎年、確定申告書を仕上げたのちに不安を覚えないことはない。税務署は黙って受け取ってくれるけど、実は雀の涙のような私の申告など「はいはい」てな感じで鼻先スルーしてるんだろう……とか勝手な想像をしていた。それがもし、今回の申請によって、私の素人会計が露呈し、各種窓口から「なんじゃこの書類は」「あほかこの売上台帳の書き方は」とお怒りを買うことになったら……。給付金どころかこれまでの不様な帳簿一式を全部掘り起こされ、挙句個人事業をクビになるのじゃなかろうかと、戦々恐々となったのである。

でもまあ、状況が状況なので、私は歯を食いしばって前年申告控を用意し、ほとんど空欄の悲しき売上台帳をこしらえ、おずおずと申請をいたした。

で……それでなんとか成った。

私は膝から崩れたよ。漏らしはしなかったが。

「あゝ、私の帳簿の付け方は正しかったわけね」

資金云々とは別の安堵を覚えたのである。

ああ、助かった。生き永らえた。命の御灯明はまだかすかに灯影を揺らしている。南無阿弥陀仏。危ない商売は早めに足を洗う必要があるねえ……。

 

れにしても、ニュースを見ていると、都会の飲食店がもうアップアップして、やれ廃業だ、倒産だと、悲惨な話が後を絶たない。4月7日に緊急事態宣言が出てわずか1か月で店をたたむなど、なんと簡単に潰れてしまうものかと唖然とする。自転車操業自転車操業だ。こういう人たちは、蓄財というか、内部留保というか、そういうのは一切なしでやってるんだろうか? そういうの無しで商売をしようとするなんて、豪胆だなあと思う。まあいろいろ事情はあるんだろうけど。

そんな話を聞くにつけ、私は8代目三笑亭可楽師匠の古典落語『らくだ』を思い出す。『らくだ』知らない人は動画サイトで聞いてください。

噺の冒頭で、紙屑屋はしつこく用を頼んでくるヤタケタのクマにこう言って逃れようとする。

「旦那、勘弁してくださいよ。今日はまだ一文も商いをしちゃいません。ウチにはお袋一人、嬶一人、ガキが一人、腹を空かせて待っている。釜の蓋が開きません」

ところが  
その後、酔って豹変した紙屑屋は、クマに「おめえ、もう商いに行った方がいいんじゃねえか?」と言われて激高する。

「おう兄弟。『商いは病み患い、雨降り風間』と言うぜ。一日二日商売を休んだからって釜の蓋が開かなくなるようなケチな紙屑屋とは、紙屑屋の出来がちがうんだい」

『らくだ』の紙屑屋ですら蓄えはあるようである。

まあでも、今度のことで、商いをする人はいろいろ考えるだろうね。事業というのは刺激的で創造的なものだ。実現にあたり、そりゃ夢を見なきゃいけないし、叶えようとするのはいいことである。だが、やはり大地にしっかり足腰をすえてなくては。支援金だって税金なのである。事業をするのは自由だけど、社会に軒付いてやるからには、身の処し方ひとつにも責任てものがあるような気もします。「普段税金を納めてりゃ文句は無いだろ」というだけじゃ、なさそうです。

人のことは言えないね>_<がんばります。

 

Kindle初参戦作が五周年です。合体版を買ってくんさい。

超「腸」論。

進化論の本を紐解いて私なりに考えますと、生き物の祖先はみんな虫けらで、陸の上を這って歩く生命の基本的な構造というのは、食う孔と出す孔のついた一本の管みたいなものだろうと思うのです。ざっくりいうと、腸のぶつ切りが生きている  ミミズみたいなのがまさに原初のイメージなのであります。

その管めが、長い年月でいろいろ便宜を重ねて、消化液の出る袋だの、解毒液をためとく袋だのをくっつけ、さらに、捕食しやすいアームとか捕食されないためのなにやらがオプションで付属されてった。やがてそのうち、くっつく物が増えすぎたので、それを別処で一括管理するために、脳みそができた……のだと思う。

しばしば「腸は脳と関係なく動いてる」と言う。たしかに、上のように考えると、臓物史においては腸の方が脳よかずっと先輩で、脳を雑務全般を取り仕切る事務長的なお役目とすると、腸は代表取締役であり、腸の旦那は脳の束縛とは別に行動する権利も能力もあるというものだろう。

そういうわけだから、腸具合が悪い時、脳が文句を垂れて「俺の腸はケチだ。物惜しみして排泄をさぼってやがる」「ガスばかり溜めこんで増長(膨張)しとる」などと言うのは、まったくけしからん脳の思い上がりであって、腸は腸で思うところがあって生命の奥義を発動して蠕動を休んだり自律神経に反したりしているのかもしれない。それが経営者主観、トップマネジメントというものじゃなかろうか。

われわれは脳を駆使して意識的に生きようと努めるけど、本当は永遠に腸の手下で、腸に愛想を尽かれたら死んだも同然なのである。

 

グリーンボーイ・アッパータイム

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