確定申告は年に一度のことである。
時期が近づいて領収書をまとめ、帳簿を付け、そんでもって申告の書類をつくっていくわけだが、毎回やりながら
「あ、こういうことか」
「なるほど、そうやるのか」
「これはこういう勘定項目か」
と学びがある。
でも年に一度のことなので、学んだことも、一年経てば忘れてしまう。
翌年を迎えれば、申告の時期にまたしても
「あ、こういうことか」
「なるほど、そうやるのか」
「これはこういう勘定項目か」
「……って、これ去年も思ったことじゃん!」
毎年しょっぱいことの繰り返しになっている。
アホである。
全くアホである。
が、仕方が無い。
個人事業をやる前から自分がアホなことは分かっていたので、いまさら「アホである」というのは何の言い訳にもならないのである。
私は意外に律義&せっかちなところがあって、例年、確定申告の期日がはじまると、開始から少なくとも4,5日以内にえいやっと提出し満足していた。日本の学校で教育を受けたからには「かけっこでも宿題でも何事もはやいことはいいことだ」と教えられているので、なんだかそれだけで褒められてもいいはずだと勘違いしているのである。
だが、実は世の中には、時間をたっぷり使い、ギリギリまで考えをめぐらし、意を及ぼし、準備万端整えておこのうのがよいことがザラにある。むしろそっちの方が結果として良いケースが多いくらいだ。
私は今年の確定申告で、そのことを実感したのだった。
御承知の通り、今年は申告期間が、新型コロナウィルスのために、後ろにびろんと一か月も延びた。私は、ちょっと忙しかったのと、かつまた、例年のおのれのアホさ加減にうんざりしていたこともあり
「伸びたんなら伸びたなりに遅れて出すべえ」
と、最終日に持ち込むべく、帳票までやってあとは放置。帳票付けにあたり、今年も例年通りおのれの「アホ」さ加減は堪能したので、しばらく休憩することにした。
と、ここで意外な気付きを得た。
私のまわりの個人事業主ども、すなわち確定申告仲間らが、十二支の競走のようにひとりまたひとりSNSに「済ませた!」みたいなことを載っけだした。
「ホウホウ、みんなはやいわね…」
わたしは例年、誰よりも先に申告を済ましていたので、あとからやる人に何かを問うことは無かった。だが、今年は後出しを決め込んでいるので、先に済ました人に「どうだった?」「大変だった?」と尋ねてみる機会がうまれた。
すると、いろいろな回答があった。
「あれをああしておけばよかった('A`)」
「こういう風にすればよかった('A`)」
「これは〇〇〇〇しておけばなぁ('A`)」
おお、なるほど!
私はいたく感激した。
みなの口から溢れ出たのは軒並み後悔で、なおかつ、私が自分の脳みそと検索能力を駆使しても絶対思いつかないような、有益な申告ノウハウの数々だった。中には「税理士さんに教えてもらった」というやり方を惜しげもなく教えてくれる人もいた。
おかげで私は、彼らから聞きだした情報をもとに、自分の申告書類をつくりなおす機会を得た。仲間らの後悔を糧に、よりより申告を行うことができたというわけである。
「あー、急いで出さずにおいてよかったw」
日本には、いろんなコトワザがある。
急いては事を仕損じる。
残り物に福がある。
真打は最後に上がる。
あるいは
善は急げ。
思い立ったが吉日。
先んずれば人を制す。
いろんなことが言われるけど、とにかく、今年は確定申告期間が延びたおかげで、なにかこう、賢い生き方、というのをちょっと学べた気がした。
…と、これもまた来年学びなおすのだろうか?
いや、コロナはもう終わっててほしい。