アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

無責任落語録(31)「四代鈴々舎馬風」

近は連投だなァ。
……にもかかわらず、みんな、よくアクセスしてくれたな!

乱暴な挨拶の種明かしは後でするとして、本日、拙作「ブレイブガールスープレックス」の無料キャンペーンがスタートした。それにしても、またも難局と重なった。プライム何とかである。ノアの箱舟に乗せてもらえるのはほんのわずか。むろん、拙作は洪水に飲み込まれて、息も絶え絶え。
「オラたちゃ、浮かぶ瀬がねえなァ……」

そんな中、いろいろ考えた。自分のライティングにおける欲望のプロセスを。

  1. 根本的に、書くのが好きだから書いてる。
  2. 読んでくれる人がいたら、是非読んでもらいたい。
  3. 面白ければ、また別の拙作を読んでもらいたい。
  4. んで、買ってくれるなら買ってほしいし
  5. いっぱい売れたら嬉しい!

どこまでが純粋なのかな。まあ、たぶん3までなんだと思う。良いのが書ければ必然的に4や5になっていく。最初っから4や5に向かうのはどうかと思うけど、人情として分からんでもない。

当ブログの落語録では、芸人のこの手の思考について、幾たびか触れたことがある。

「芸人は、売れなきゃいけません。売れなきゃ卑屈になります」
「芸人は、長屋に住んでなきゃいけません。お客さまより良い生活をしたらダメ」

売れるとか売れないとか以前に、本当に落語が好きで、口演していることそれ自体が無上の幸福であるような、そんな感慨が理想的だろう。でも、食っていかなきゃいけないしね。


れたかどうかと言われたら甚だ疑問ながら、その口演のインパクト・切っ先がよく、寄席に多くのファンを持っていた噺家がいる。
四代目鈴々舎馬風  古典落語は少々で、物真似と漫談で人気のあった、通称「鬼の馬風」だ。

「えーっ、みんな、よく来たな。どこから来ンのか知らねえけど、よく遊んでいられるな。お帰りよ……って、ウソだよ!」

冒頭で使ったのは、馬風が高座で最初に話すこの一節のパクリである。

馬風は鶴本の志ん生に入門し、三代今輔、四代小さんと遷り、真打昇進して馬風を名乗った。
豪快な語り口と独特の切り口、「今日はこれでおしまいっ!」とぶったぎるハケ方まで、いちいちインパクトに溢れている。動画が残っていないのがまことに残念だ。
新作一辺倒で、現代の穴をつくというか、風刺が多い。古典落語も少々残っているが、それもいかにも馬風風の味付けだ。

「~やがて、あなたの緑の森で、花は笑い鳥は歌うであろう。……ねえ、何がおかしいんだい? こういう詩的なことを言うと笑うんだから。ねえ、~」

(権兵衛狸のマクラ)

風刺の方は、寄席の漫談にありがちな駄洒落や年寄りこきおろしじゃなく、ちゃんと馬風特有の切っ先がある。

「なんでぇ、東大なんて威張りゃがって。勉強が出来るやつだけ通して、できないやつを落とす。こちとら勉強ができないから大学に行こうとしてんじゃねえか。何で落とすんだい」
(やや編集:早慶の学生にはよく受けた)

「満場の悪漢どもに告ぐ!」
(刑務所の慰問で)

彼自身が脳卒中になって復帰した時の高座は「病院物語」として録音が残っている。「どうして俺がこんな目に遭わなくちゃならないのか……」と悲嘆するところは涙を誘う。が、

志ん生が倒れたって聞いた時の、うれしかったのなんの!」

馬風の芸風は、戦前戦中の変化の時期、まさに毀誉褒貶の対象であったろう。落語評論家や古典一辺倒の大師匠たちは、むろん彼を評価しなかった。それでも馬風馬風のやりたい芸をとことん貫いた。そこに躊躇はあったのか……録音を聴く限り、あまり感じられない。売れる売れないを超越したところに馬風の本質がある気がする。

そう。売れる売れないじゃない、やりたいことを躊躇せず、前に進めー! ってつもりで今回は馬風師匠を取り上げました。
頑張りますよ、ウン。

無料キャンペーンは10/10の夕方まで。

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