アヲイ報◆愚痴とか落語とか小説とか。

創作に許しを求める私の瓦斯抜きブログ

温泉記。その2<弥次ヶ湯温泉>

ッサンになったら心の感度が鈍って、いろいろなものに興味を持てなくなる、あるいは、自分の好きなもの以外どうでもよくなる、なんて思っていた。で、十分そのキライもあったから、私ももはやオッサンであることだなあと思っていたら、意外や意外、温泉好きになってきた。ここにきて何か新しい物に興味を惹かれるなんてね、びっくりだ。

温泉。正直言って、大嫌いだった。

小さい頃親に連れられて行った湯といえば。
裸のオッサンがいっぱいいて、同じ湯船に浸かって……ああ汚い。
しかも、私はのぼせやすいので、せいぜい15分くらいしかいられない。
折角汗を流しても、外に出たら暑くて汗まみれ。それで家路につく。帰ったらシャワーを浴び直したいくらいだ。

ところが、いまの商売になってから、事情が変わってきた。
私が温泉に行くのは平日の昼ひなか。みんなが一生懸命働いている時間帯だ。だからほぼ貸切の湯。田舎の秘湯じみたところだと、まず間違いなく一人きりだ。

サラリーマン諸君、どうだ、いいだろ。

のぼせやすいのも、最初に水分をしっかり補給するとか、頭に冷水タオルをのっけとくとか、いろいろ対処法が見つかったので、解決に向かっている。あと、身体を鍛えておくことも大事だね。

とにかく、安いし、気楽だし、贅沢気分に浸れる。
経済的な娯楽である。


日は指宿市弥次ヶ湯温泉を訪れた。

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ド田舎の、区画がしっかりしていない民家群の中に、その湯はある。
瓦屋根の建物が、二棟。藪に囲まれ、隔世の感。
暖簾をくぐるが、番台に人はいない。湯銭を入れてと書いてある箱がある。300円をチャリンと入れて、脱衣場へ。
暖簾をくぐると  おお、湯殿と脱衣場に仕切りが無い。
ついでに人もいなかった。

湯殿は壁も天井も総板張り。シャワーは無い。カランが一個。真ん中にデンと、四角い茶色の湯船が鎮座している。なんとも風情のある情景だ。

窓が全開で、湯気がこもっていないことは、のぼせやすい私にはありがたい。外からは葦簀ばりで見えない。首でも伸ばさん限り。

次ヶ湯温泉には二つの湯船があって、一つは「弥次ヶ湯」。こちらは熱い。とても熱い。ガマンしてジリジリと肩まで沈んでいくが、身動きが取れなくなる。
志ん生のマクラを思い出すね。

熱い湯船にヤセ我慢して入る江戸っ子ふたり
「う~、ぬるいねえ。ぅううう」
「ああ、ぬるい。ひいい」
「こんなにぬるいと、湯がくいつくね」
「おぉう、おまえ、なんかしゃべんなよ」

結局落語の話になったか。

もう一つの湯船は「大黒湯」。加水してあって、ぬるいくらい。ほんのり白濁。私のような温泉素人が湯を肌で味わうにはこちらか。
常連さん方が数名いききしていたが、みなさん熱い弥次ヶ湯の方へ。ぬるい大黒湯は初心者向けなのか。あるいは熱さも慣れたらヤミツキになるのかしら。

弥次ヶ湯と大黒湯は、それぞれ別の軒にある。男湯ではそれが隣り合っているので、裸のまま移動できる。ここを行き来して熱い←→ぬるいを繰り返すことの極楽ときたら、最高だった。
ただし、軒の継ぎ目が外とつながっていて、長暖簾一枚あるだけ。風が吹いたら丸見えである。しかしその風の心地良さの、ありがてえこと、ありがてえこと。

次ヶ湯温泉の建物は、築125年だそうだ。1892年から続いているということである。
柱も壁も、階段の欄干も、こしらえが重厚である。
二階が休憩室になっていますよと教えられ、上がってみた。16畳くらいの畳の部屋。窓を開けると風が吹き抜けて心地よい。柱に背を持たれ掛け、風に身を任せる。
これは寝てしまう。
ていうか、ちょっと寝た。

ああ、ここに本もってきて読んだらよさそうだ。
ああ、ここでPC広げて仕事したら捗りそうだ。

そんなことを思ったが、温泉場の休憩室に世情を持ち込むなんて野暮の極みだと思い、全部よすことにした。

と、こんな感じで、これからも温泉のことを書いていこうと思ってます。せっかく行って記録しないのもなんだし、これからの湯道楽の励みにもなるので。

あと、紀行文の練習になるかもしれない。

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